蕎麦の褒め口上

あまり結構珍しさに 私がちょっと褒めてあげましょう

 

そもそも蕎麦の始まりは 越後の国は十日町 田麦部落が名産で

 

お盆前に干野刈り 突っつき起こして そばの種をばまかり出で

 

月の恵み日の恵み そばは十分生い茂り 木もり萱もり案山子の神は

 

五人張りで十五足 用心厳重にかまいれば 其の出で立ち勇ましさ

 

はや十五夜の月は過ぎ そばは白花咲きこがれ

 

その香が世もにさしくれば そばはたちまち黒装束の三角と相成った

 

この時とばかりくつがいさんとて石臼やぐらにに飛び乗って ごうごうと廻しければ

 

そこに出てくる篩の金助をば 握りこぶしでごっつんとはっ飛ばせば

 

粉太郎 鉢平の門をギューっと押し開き

 

そこに一騎現れたるが山芋の鉄之助と相撲取りの名人が

 

どっこいしょと組み付いた

 

ねんじ上げてはねんじ下ろし 打ち板谷にどんと ほっかせば

 

麺棒之助 早業の侍がおっ取てば おつちらし おんのしては 折ったたみ

 

包丁之助広幅が駒を早めてとっとっとと切り付けた

 

鍋黒ひょう鍋蓋 取って之助が火の手をさして待ち構えれば

 

蕎麦入道の長盛は この時とばかりに敵の陣地に飛び込んだ

 

すいのう迎えの文平 飯ばしの兄弟は あら危ない危ないと茹で上げたり

 

さいめん之助 粉四郎とて 色白き侍は ざるの丘へと陣をとる

 

はるかかなたを眺むれば 座敷の方では大騒ぎ

 

鯛の浜焼き 刺身の五郎 きんぴら之助に煮豆の三郎

 

続いて出てくる弁慶が 七つ道具を背にまとい

 

したじの旗をばひるがえし 亭主様があちらこちらと廻ってさいはいをふるうのも

 

皆さいめん之助 粉四郎の手柄であります

 

 

ちょっと申して 蕎麦の褒め口上といたします